東京から少しだけ遠いだけなのに、富士山、焼きそば、おでん、、、東京では味わえない独特の文化がある街。
静岡県には孤高の建築家白井晟一の作品や、世界的にも有名な坂茂の建築などわざわざ見に行きたい建築があります。また、富士山を望むキャンプ場、富士山山麓に広がる豊かな自然、などのアクティビティもあります。独特のグルメもあわせ、多様な旅行テーマを組み込めるところが魅力です。

旅のルート
東京からであれば、2泊3日のドライブであれば、以下の様に静岡へ向かう途中に富士山山麓キャンプなど、デザイン見学以外のアクティビティも追加できます。
東京出発〜富士エコパークヴィレッヂ(キャンプ)〜風穴(青木ヶ原樹海)〜白糸の滝〜富士宮市でランチ〜静岡県富士山世界遺産センター〜静岡県草薙総合運動場体育館〜静岡市で夕食〜静岡市立芹沢銈介美術館〜横須賀美術館でランチ〜東京着
富士エコパークヴィレッヂ
私は妻と2人旅行が多いので、その際は軽バンキャンピングカーをレンタルして簡単なキャンプを楽しむことが多いです。
ただの車中泊になると、味気ないですし、WC周りも案外苦労します。
おすすめはオートキャンプサイトのあるキャンプ場です。
水回りが完備されつつ、焚き火や、自然も楽しむことができます。
オートキャンプサイトは案外設定されていないことがあるので、事前に確認することは大切です!


静岡に行くので、せっかくなので途中で富士山の麓でキャンプがしたいと考えました。(安易です)いくつかサイトを確認したところ、こちらのキャンプ場にたどり着きました。オートサイトの範囲が広く、敷地も広いのでプライバシーが守れそうです。
実際訪れてみて、草原になっているキャンプサイトからの雄大な景色は素晴らしく、正面の富士山だけで無く四周にも山並みが見えました。
WCもしっかり管理されていました。前日が雨天だったため、車でのサイト侵入はぬかるんでいて少し大変でしたが、とても快適に利用することができました。
下の写真はちょうど正面に富士山が見えていますが、雲で頂が見えていません笑。

マックスバリュが多分最寄りのスーパーです。ホームセンターも併設されています。ここで食材やまきなどの準備をされるのが良いかと思います。
キャンプサイト探しはいつもこちらのサイトを利用しています。
キャンプ場には鶏や、アルパカもいますので、お子様にも良いかもしれません。

富岳風穴(青木ヶ原樹海)・白糸の滝
暗くて濃い自然 青木ヶ原樹海
翌朝からはまず、富士周辺の自然に触れに行きました。
富岳風穴はシンプルに涼しい洞窟です。無料パーキングも隣接しているのでアクセスも良好です。
私は風穴よりも、パーキングから青木ヶ原樹海のハイキングをおすすめします。
溶岩質の真っ黒な痩せた土壌の上に、永い年月をかけて苔むした深い森が出来上がっています。森の密度の濃さ?に他の地域とは異なる迫力を感じることができます。
白糸の滝
白糸の滝は天下の名瀑として有名です。富士山の雪解け水が湧き出し、高さ20m幅150mの湾曲した崖地から流れ出しています。
幅広の崖から、湧水が流れ落ちる様はまさに白糸の滝です。

滝は湧き水からなっているので、他の滝と異なり、山間の上流とはまた異なった雰囲気です。崖上の木々や、崖下の透明な水、地被類がとてもきれいです。
昔から有名な景勝地であるため、滝を鑑賞する歩道も整備されており、誰でも快適に景色を楽しむことができます。近隣には駐輪場もあります。

静岡県富士山世界遺産センター
設計 坂茂
富士宮市にある富士山の自然や文化的価値を紹介する施設です。
富士山の歴史や信仰、自然環境についての展示があります。

設計は坂茂。紙管を使った建築などで知られ、世界的に有名な建築家です。最近では大分県立美術館や、銀座のニコラスGハイエックセンターなどがあります。
建物自体も富士山を模したデザインです。円錐形を逆転させた形状をしており、建物周辺に張り巡らせた水盤に映り込み、富士山が現れます。

逆さ富士状の建物の内部はらせんスロープ状になっており、傾斜した床をまるで登山するように登っていきながら、展示物を鑑賞します。
最上階には大きなテラスがあり、本物の富士山を一枚の絵のように鑑賞することができます。

逆さ富士を構成するのは格子状になった木材です。静岡の県産材を利用してあるそうです。3次元曲面になっているので、木材加工は大変だったでしょう。
また、美術館は内装を不燃にする必要があるので、木材は不燃処理をする必要があります。少し白っぽく粉を吹いているのはその影響ですね。

展示物は、映像が多く、本物の絵画や展示物が少なく、少し物足りないものに感じました。ただ、建築体験がそれを補い、身体的、空間的経験を追加することで、展示に魅力を追加してあります。もしこの建物が普通の作りのものであれば、このコンテンツだけではとても人を呼ぶことのできない施設になっていたでしょう。建築家の発想力、問題解決力の必要性を改めて感じることのできる施設でした。
富士山本宮浅間大社 江戸から続く厄除け開運スポット
富士山本宮浅間大社の参道、大鳥居に隣接しています。
浅間大社はまさに世界遺産センターで展示されている、信仰の対象としての富士です。富士山を神体山として祀る神社です。ぜひこちらも拝観しましょう。
富士宮やきそば
同じく世界遺産センターから、参道沿いに北に歩いていくと、「お宮横丁」という小さな路地があり、そこに富士宮やきそばのフードコートがあります。テイクアウトのお店ばかりで、イートインはありませんが、広場にテーブルや椅子が用意してあります。また、湧き水が湧いており、それを飲めるようになっています。
B級グルメとして有名なやきそば。もっちり食感の麺とあっさりしたソース味が特徴です。食べ比べをしてみても良いかもしれません。
静岡県草薙総合運動場体育館
設計 内藤廣
静岡県草薙総合運動場という大きな運動場に作られた総合体育館です。
バスケットコートが4枚入る大きな体育館です。
設計は内藤廣。赤坂のとらや、牧野富太郎博物館などを設計した建築家です。
外観は金属屋根だけが見えるものになっています。屋根以外の部分は半分地下に埋まっているので、公園から見ると圧迫感を感じられません。また、観客は階段を登る必要なく観客席に入ることができます。

外観は楕円の円錐の上部をカットしたものの上に切妻屋根が乗っている、独特のかたちです。あまり造形的に格好いいわけではありませんが、とても素直なかたちにも見えます。内藤建築ではいつも屋根は雨仕舞いを配慮しシンプルに作られているので同様の配慮でしょう。

内部は圧巻。どこを見てもほぼ木材です。これほど木材が見える体育館は他にないのではないでしょうか。
体育館のような大架構はあまり木造に向かないのではと思うのですが、いかがでしょうか。この体育館は鉄と木材、コンクリを適材適所で構造に利用されています。最上部(写真で天井部分)は鉄骨トラスで組んであり、大きな空間を無柱で作っています。そのトラスを支える下部構造は木造の柱がリング状に並んだ部分になります。この柱は天竜杉という杉材が利用されています。そして基礎部分はコンクリとなって、スラスト(リングのズレ)を抑えてあります。
これほどの木造の大空間というのは、なかなかほかで体験することはできないと思います。公園自体も大変広く魅力的ですのでぜひ訪れてみてください。
静岡市内の建築みどころ 静岡おでんも
静岡市内には駿府城や静岡県立美術館、隈研吾設計の「日本平夢テラス」、西沢大良設計の「日本基督教駿府教会」などがあります。今回の旅では訪れることはできませんでしたが、どれもおすすめです。

静岡おでんは、黒はんぺんが入って、黒いスープ、ダシ粉をかけて食べる御当地おでんです。スープは黒いですが、味が濃いわけではなく、よくしみたおでんは寒い時期にはとても美味しいです。
静岡駅から徒歩15分ほどにある青葉横丁という昭和テイストの路地にたくさんのおでん屋が軒を連ねています。どのお店も小さくカウンターのみのお店で、地元の皆さんと一緒にいただくのが楽しいです。おでん屋さんをはしごするのも楽しそうです。

静岡市立芹沢銈介美術館
設計 白井晟一
登呂遺跡の敷地内にある美術館です。
民芸の染織家芹沢銈介の作品が展示される美術館になります。
建物は雑木林の中にひっそりと配置されています。
雑木林の中に、石積の塀が見え、そこをくぐると平屋建ての美術館に着きます。

エントランスは小さく、公共建築というより、個人大豪邸に来たという感じのスケール感です。
白井晟一は寡作な建築家として知られています。東京だと渋谷松濤美術館やノアビルが有名です。丹下健三や前川國男などと同時期に活躍した建築家です。端正な「弥生的」デザインを標榜した丹下健三に対し、「縄文的」なデザインといわれています。窓が少なく、石材やタイルを用いた重厚な建築、そこに独特のセンスで持ち込まれるディテールが入り、唯一無二の個性的なデザインを作り出されています。

美術館は噴水のある中庭があり、そこに向かってまどがありますが、窓はすべてカーテンで覆われています。それもそのはず、芹沢銈介の作品の多くはテキスタイルなので、直射日光には弱いからです。なぜそういった展示物に対する基本的配慮が欠けているのかはわからないです。

展示室の合間にある休憩室は中庭に面しており、静かな光が入り込みます。まるで大きな邸宅に訪問したかのような、落ち着いたスケール感の空間が続きます。
展示空間は写真撮影禁止ですが、大小さまざまな空間がすこしずつ重なり合いながら連続していくさまは、大変美しくまた、白井独特のセンスで作られているので、ここでしか体験できないものになっています。ぜひそのセンスを体験していただきたいです。

隣には芹沢銈介の家も展示されていますので、忘れず御覧ください。
登呂遺跡には再現された竪穴式住居があるので、そちらもぜひ見学されると良いと思います。
実際に発掘されているのは、住居跡なので、基礎というか、柱を立てていたであろう穴や土間部分だったりするのですが、そこから住居を想像するのはすごいですね。
横須賀美術館
設計:山本理顕
2024年建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞を受賞しています。関東では埼玉県立大学、福生市庁舎などを設計した建築家です。
横須賀美術館は静岡の建築ではありませんが、東京への帰路に立ち寄ることができます。
東京湾を一望できる観音崎公園内に位置し、建物の背景は雑木林の斜面地、正面は東京湾となっています。

外観はガラス張りで低層の建築です。敷地を丘状にして建物を半分地下に埋めることで、建物の高さを抑えることで圧迫感をなくし、周囲の景観と一体化しようとされています。(草薙体育館と同じです)
正面には白いルーバーの庇があり、その庇部分がレストランのテラス席としてつかわれていたり、日本の縁側的に使われています。
ガラス張りとしているのは、海際の建築になるので金属などはすぐに錆びてしまうからでしょうか。総ガラス張りの四角い建物の内部に白い角丸の箱が入れ子状に入っています。入れ子状の構成にすることで、建物の中に2種類の性格の異なる空間を作っています。白い箱は、展示室、収蔵庫として直射日光を遮り、美術品を守ります。白い箱の外側は自然光の入る開放的な空間で、エントランスや、休憩スペースになります。
白い箱に丸い穴をうがったり、ブリッジを通すことで、互いの空間が垣間見え、鑑賞者、来館者が思わぬところから見えたり、海が望めたりします。

サインデザインは廣村正彰が行っています。ピクトがキャラクターとなっていて、建物を案内するような形になっています。シンプルな作りの空間のよいアクセントになっています。

屋上に上がることができます。屋上はガラスの屋根なのですが、一部デッキになっており、東京湾が一望できます。横須賀は東京湾へ入る海のボトルネック担っている部分ですので、たくさんの船の往来が密集して見ることができて、独特の景観になっています。
こちらの美術館はレストランの評判も良く、おすすめです。東京 南青山に本店を構える「リストランテ アクアパッツァ」の日高良実シェフが総料理長を務めるそうです。海の幸を使ったイタリアンです。人気店ですので、予約をしておくか、美術館鑑賞の前に席取りをしておくほうが良いと思います。気候の良い日は是非海の見えるテラス席をおすすめします。
静岡デザイントラベルまとめ
静岡のデザイントラベルはいかがだったでしょうか。建築だけでなく、富士山の自然アクティビティやグルメなど、バランスよく楽しめます。
ぜひ今後の旅行プランの参考にしていただけると幸いです。

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